外科
特色
当科では、主に消化器、乳腺、呼吸器などの悪性腫瘍の手術・化学療法、および胆石、鼠径ヘルニア、
気胸等の良性疾患の外科治療を行っています。
当院は急性期病院であり、外科もその一翼を担うべく二次救急施設として急性期疾患の治療を担当していて、
急性虫垂炎や消化管穿孔を初めとした腹部救急などの外科的治療を行っています。
診療の基本方針は、EBM(Evidence-Based Medicine)に基づき、十分なインフォームドコンセント
(現在の病状や治療法に関する詳しい説明)のもとに、一人一人の患者さん毎の異なる状況を考慮して診療をすることを
第一としています。
医師は最新の情報、診療技術の修得につとめ、看護師、検査技師、放射線技師、薬剤師、事務職員などのコメディカルとの
チームワークを大事にして、患者さんの権利を尊重し、安全に配慮した質の高い診療を心がけています。
当科は各学会指導医、専門医を中心に高度な医療を行っており、また横浜市立大学外科治療学教室の関連施設であり、
神奈川県立がんセンターとの人事交流もあります。さらに全国規模の臨床試験にも積極的に参加しています。
そのひとつとして平成23年1月より日本全国の手術・治療情報を登録し、集計・分析することで医療の質の向上に役立て、
患者さんに最善の医療を提供することを目指す
National Clinical Database (NCD)の外科手術・治療情報データベース事業が開始され、当院も参加しております。
専門医による診療
当科は日本外科学会の定める外科専門医制度修練施設(指定施設)で、外科専門医の育成に力を入れており、胃や大腸などの消化器の手術をはじめ、ソケイヘルニアに対する手術治療、乳腺、甲状腺、肺の疾患に対する手術治療などを幅広く行っています。最近ではそれぞれの疾患(特に悪性疾患)に対する専門性が重要視されるようになってきており、消化器外科、乳腺外科、呼吸器外科について、日本消化器外科学会専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、呼吸器外科専門医による診療を行っています。
当科は横浜市立大学外科治療学教室(旧第1外科)の関連施設であり、神奈川県立がんセンターとの人事交流もあります。
地域に密着した診療
当院は地域医療支援病院であり、地域に密着した医療を目指しています。患者さんの多くは平塚市、大磯町の方ですが、そのほか伊勢原市、厚木市、秦野市、茅ヶ崎市、藤沢市、足柄上郡、小田原市などの方もおられます。このうちおよそ8割が院内、院外から紹介された患者さんですが、紹介状のない方や緊急手術にも対応しています。当科は年間を通して毎日外科医が待機しており、時間外でも外科スタッフによる対応が可能です。
また、退院後に調子が悪くなった場合でも、地域の医療機関と連携を密にしながら治療を継続することができます。
“病気を治す医療”から“患者を治す医療”へ
いままでの外科は病気を治す手術をすることだけを中心に考えがちでしたが、私たちは、きれいな傷、痛みの少ない手術にもこだわっています。それは手術を受けられる方にとっては、傷のことや痛みのことに対する不安は、病気に対する不安と同じくらい大きいと考えるからです。
がん治療においては、手術療法だけでなく、抗がん剤や放射線療法も積極的に取り入れて、患者さんひとりひとりの状態にあった、最善の治療法を選択し、提案するように心掛けています。また、緩和医療も積極的に行っており、疼痛などにも十分対応することができます。
診療内容
消化器外科
日本消化器外科学会の定める専門医修練施設であり、日本消化器外科学会専門医の育成、指導にあたっています。
消化器外科は、胃癌や大腸癌など消化器の癌に対する手術、胆石症に対する手術、そけいヘルニアに対する手術などの予定手術や、急性虫垂炎、消化管穿孔などによる腹膜炎、腸閉塞(イレウス)といった急性腹症に対する腹部救急手術などを行います。
乳腺内分泌外科
日本乳癌学会の定める認定施設であり、日本乳癌学会乳腺専門医・認定医の育成、指導にあたっています。
乳腺内分泌外科は主として乳癌・甲状腺癌などの乳腺・甲状腺疾患に対する治療を行います。
呼吸器外科
呼吸器外科専門医制度における関連施設であり、呼吸器外科専門医の育成、指導にあたっています。呼吸器外科は主に肺癌などの肺腫瘍に対する手術、自然気胸に対する胸腔鏡下手術、胸腺腫や神経鞘腫(神経原性腫瘍)などの縦隔腫瘍に対する手術を行います。
症例数
悪性疾患手術症例数
| 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010年 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 食道癌 | 2 | 1 | 3 | 1 | 2 | 1 | 0 |
| 胃癌 | 54 | 60 | 45 | 44 | 48 | 53 | 41 |
| 大腸・ 直腸癌 |
76 | 80 | 77 | 93 | 94 | 92 | 107 |
| 肝胆膵 | 2 | 3 | 3 | 5 | 4 | 10 | 7 |
| 乳癌 | 39 | 50 | 50 | 46 | 68 | 60 | 61 |
| 肺癌 | 4 | 6 | 25 | 34 | 23 | 30 | 25 |
| [総計] | 177 | 200 | 203 | 223 | 239 | 246 | 241 |
主な疾患に対する治療方針
消化器癌について
消化器癌とは食道癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌などの臓器に発生する悪性腫瘍のことです。
たとえば胃癌は元来日本人に多い疾患で、また大腸癌も近年非常に増加している疾患です。
当科では外科領域、消化器領域、癌領域の各学会指導医、専門医を中心に疾患ごとのガイドラインやEBM
そして最新のコンセンサスに基づいた医療を行っています。
診断に関しては消化器内科との連携を深め、詳細な問診や正確な診察、レントゲン検査・CT・内視鏡など必要十分な検査を行って
病状や進行度を診断します。
そして治療方針の決定に関しては、疾患だけでなく既往歴や合併症から患者さんごとの評価が重要であり、
必要に応じて他科専門医とも連携をとっています。
そして治療にあたっても科を超えて協議し、手術治療はもとより、抗癌剤、分子標的薬による化学療法やまた放射線治療など
それぞれの患者さんの病態に見合った最適な治療方針を決めていきます。
外科では手術だけを行うと思われがちですが、術前術後に行う抗癌剤や分子標的薬といった薬物治療や放射線療法などの
マネージメントも当科が行っており、個々の状態変化に深い理解と更なる良好な結果が得られるよう、
集学的な治療を担う立場であることを心がけています。
また患者さんにより良い医療が提供できるよう、学会発表やセミナー等への参加を積極的に行い、最新の情報、
診療技術の修得にも力を入れています。
一例として、術後疼痛の軽減や合併症の減少を目指すために、腹腔鏡を用いた侵襲の少なく術後の回復を短期間にしうる
手術を積極的に行い、低侵襲手術の適応を広げる努力を行っています。
腹腔鏡手術の対象疾患は、悪性疾患として胃癌(腹腔鏡補助下胃切除)、大腸癌(腹腔鏡補助下結腸、直腸切除)、
良性疾患としては胆石症、虫垂炎、腸閉塞、鼠径ヘルニア(腹腔鏡下胆嚢摘出術、腹腔鏡下虫垂切除術、腹腔鏡下腸管癒着症手術、
腹腔鏡下ヘルニア修復術)が挙げられます。
特に上記良性疾患の手術は単孔式手術(SILS)を目指し、手術創の数を減らし小さく目立たなくすることを求め努力しています。
また患者さんの経済的負担を軽減するため出来得る限り短期間の入院、早期の社会復帰を追求します。
その一環として不必要な入院治療にかえ、外来化学療法室とも連携を深め、化学療法は積極的に外来で行うようにしています。
しかしすべての患者様に画一化された医療を提供するわけではなく、体力が落ちている方や治療の副作用の強い方などは、
本人、家族と相談し最適な環境での治療継続のため入院で行うこともあります。
当院は看護においても、化学療法と副作用、緩和ケア、人工肛門のケア等の専門的な知識のある認定看護師によるケアを行っています。
乳癌について
日本女性では乳癌が罹患率において全癌中トップであり、
現在では日本女性のおよそ18人に1人が乳癌に罹患するといわれています。
また、日本女性乳癌は、40~50代を中心とした比較的若年に多いということが特徴であり、
この年代では乳癌が女性の死亡率の第一位となっています。
しかも日本では罹患率、死亡率ともにまだ年々増加しています。
しかし今のところ乳癌を予防する方法は解明されていないため乳癌は早期発見、早期診断が重要となります。
乳癌の診断はマンモグラフィ検査、エコー検査、細胞診が診断の三本柱とされており、当科でもこれらの検査を中心に、
乳房MRI検査やCT検査、シンチグラム、乳管造影検査、マンモトーム検査、組織診検査などを組み合わせ、
正確かつ迅速な診断を心がけています。当科には日本乳癌学会専門医および複数の検診マンモグラフィ読影認定医が在籍しており、
施行した検査はこれらの医師を中心に複数の医師で検討を行い、早期発見・早期診断に努めています。
乳癌の治療は手術療法、薬物療法、放射線療法が治療の三本柱といわれています。
手術療法では、できる限り乳房の温存(乳房部分切除)を目指すこととしており、温存術では、乳腺を円形に切除したのち、
切除断端に癌が残存していないかを専門の病理医によって術中に顕微鏡検査で確認をし(術中迅速病理診断)、
必要にしてかつ最小限の切除にとどまるよう心がけています。さらに切除後の皮弁形成にも力を注いでおり、
美容的見地からの術後の整容性を非常に重要視しています。
これらによってここ数年の当科での乳房温存率は60~70%と安定して高い率を示しています。
また乳房全摘となった方でも乳房再建の希望をされる方には、当院形成外科専門医とよく相談して検討します。
腋窩リンパ節に関しては、術前検査にて腋窩リンパ節転移のないと思われる方にはセンチネルリンパ節生検を導入しており、
条件を満たした方には腋窩リンパ節郭清の省略を行っています。
乳癌のおもな薬物療法には、化学療法(抗がん剤療法)、内分泌療法、分子標的治療があります。
いずれの療法においても日本乳癌学会の示すガイドラインや世界的な重要会議の決定事項などを参考に
当科でまず方針の選定をしたうえで、その治療の効果と副作用をよくご本人やご家族にご説明し (インフォームドコンセント)、
最終的に方針の決定を行うようにしています。
放射線療法については、乳房温存を行った方にはガイドラインに則り、
原則として全例に残存乳房への照射を施行することとしています。
またリンパ節再発の予防目的や局所進行乳癌・再発例に対しても積極的に放射線照射を行っています。
放射線治療医との連携はとてもよく、放射線療法施行の是非やその部位・方法、
放射線療法施行中のスキントラブルなどの対処法などは、外科医と放射線科医の両サイドからよく診察したうえで
決定するようにしています。
近年乳癌の領域でもチーム医療の必要性がよく唱えられるようになってきました。
当科でも病理医、放射線科医、脳神経外科医、整形外科医、麻酔科医などと密に連絡をとり、
また看護スタッフ、薬剤師、放射線技師、臨床検査技師などと一つのチームを形成し、乳癌の診断・治療にあたっています。
当科のチーム医療の特徴は、乳癌情報提供室を毎週2回(月・火)開設しており、そこで
乳がん体験者コーディネーター(Breastcancer Experienced Coordinator;;通称BEC)
によるサポートを随時行っているところです。
乳癌という疾患は、“癌”であると同時に女性のシンボルである“乳房の疾患”という側面もあります。
よりよい治療を進めてゆくことがもちろん一番重要ですが、治療に際しての美容面、経済面、
また家庭や仕事などの社会面もほぼ同等に重要であると考えます。自分自身も乳癌の体験をして多くの治療を受けた女性だからこそ、
対等にアドバイスができる部分も多いと考えています。
当院コーディネーターの吉田久美氏は、自分自身が乳癌の抗癌剤治療を受けながらコーディネーター養成講座を6ヶ月間受講し
資格を得たという経験を持っており、他の医療者とはときに違った目線でサポートをしています。
当院乳腺外来受診の方やそのご家族であればどなたでもまた何度でも乳癌情報提供室をご利用いただけますので、
その際は気軽に外科外来までご連絡いただきたいと思います。
ここ最近の乳癌に関する情報は非常に多く、それに伴い乳癌に関心を持つ女性が増加していることは素晴らしいことだと感じています。
その反面、自分自身もひょっとしたら乳癌ではないかと日々悩んでおられる方も少なからずいらっしゃいます。
自分の乳房に心配な点がある方は気軽に乳腺外来を受診していただきたいと思います。
その結果として心配を払拭することができれば、それも当外来を受診した大きな効果と考えております。
ぜひ気軽に受診してください。
甲状腺疾患について
甲状腺は首の前側、のどぼとけの下にある臓器です。甲状腺ホルモンを分泌して体の活動を維持しています。 甲状腺の疾患には甲状腺機能(ホルモン分泌)に異常が生じる疾患と、腫瘍ができる疾患があります。 機能異常を生じる疾患には、主なものとして甲状腺機能が低下する橋本病(別名慢性甲状腺炎) や甲状腺機能が亢進するバセドウ病があります。通常橋本病に対しては内服治療(チラーヂンS錠)で治療をします。 バセドウ病に対しても通常は内服治療(メルカゾールあるいはプロパジール)で経過を見ますが、 効果不十分や副作用が強くて内服治療が困難となった場合には手術治療が必要になる場合もあります。 また、甲状腺に腫瘍ができることもあります。腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍(癌)があります。 良性腫瘍の場合には超音波検査等で経過観察するだけの場合が多いですが、徐々に大きくなる場合や、 もともと大きな良性腫瘍の場合には手術で切除する場合もあります。 悪性腫瘍の場合には手術が第一選択となります。手術には甲状腺全てを切除する全摘術と甲状腺の半分を残す葉切除術とがあります。 できる限り甲状腺機能を温存するためには葉切除術を選択しますが、癌の進行度によっては全摘術になる場合もあります。 同時に周囲のリンパ節を切除します。これら手術範囲は癌の進行度に合わせ、症例ごとに決定します。 当科ではこれら甲状腺疾患に対して、甲状腺外科専門医が診断から治療まで責任を持って担当いたします。
肺癌について
近年肺がんの増加は著しく、男性のがん死亡原因のトップ、女性では3番目となっております。
またCT検査をする機会が増えたことで無症状の小さい肺がんが見つかることも増えてきております。
当科では比較的早期の肺がんに対しては胸腔鏡下手術を積極的に行っております。
胸腔鏡下手術は創が小さく術後の痛みも軽くなり、術後10日前後で退院できます。
また術前術後の放射線・化学療法が必要な場合には、呼吸器内科医と連携して一連の治療を行っております。
最新の治療指針に基づいての治療を行うことはもちろんですが、
一人一人の患者さんの体力や年齢などを考慮しての手術を行うことを心がけております。
気胸について
気胸とは、肺の表面に穴が開いて肺がしぼんでしまう疾患です。
特に肺の表面に出来た嚢胞(風船のようなもの。ブラやブレブともいいます)が破れて発症する病態を自然気胸といいます。
痩せ型の10代後半から20代の男性に多いです。
軽度の場合は安静で治ることもありますが、しぼみが大きい場合は胸に管を入れて脱気を行い、
以後も漏れる空気を体外へ逃がすために管をしばらく留置する必要があります。
基本的には入院が必要ですが、当科では病態に応じて携帯可能な簡易のドレナージキットを用いて外来通院での治療も行っております。
再発を繰り返したり、空気漏れが持続したりする場合には手術をお勧めします。
気胸の手術は胸腔鏡を用いて2,3箇所の2cmほどの小さな創で行います。
手術時間は1時間30分くらいで、手術の2日後にはほとんどの方が退院されております。
また当科では、ただ嚢胞を切除するだけではなく、切り口に吸収性のシートを貼り付けて補強を行うことで再発予防を行っております。
自然気胸の胸腔鏡下手術後の再発率は約10%といわれておりますが、このような工夫により当科では再発率は約3%に抑えております。












